好気処理法とは

水処理にはさまざまな方法がありますが、ここでは「好気処理法」について紹介します。微生物の働きを活用し、有機物を分解するこの方法は、下水処理や産業排水処理において重要な役割を果たします。本記事では、好気処理法の基本から、嫌気処理法との違い、メリット・デメリット、活用事例までを分かりやすく解説します。

好気性処理法
（好気処理法）とは

好気性処理法は、微生物が酸素を利用して有機物を分解する水処理技術です。主に下水処理場や産業排水処理で採用され、高い処理効率を誇ります。

この処理法では、空気や純酸素を供給することで微生物の活動を促し、有機物を二酸化炭素と水に分解します。代表的な手法としては、活性汚泥法、散水ろ床法、回転円板法などがあり、それぞれの用途や施設の規模に応じて適用されます。

好気性処理法は、比較的短時間で有機物を除去でき、処理後の水質が安定しやすい点が特徴です。そのため、都市部の下水処理をはじめ、飲料水の前処理や食品工場の排水処理など、幅広い分野で活用されています。

好気性処理法
（好気処理法）の仕組み

好気性処理法は、主に「前処理」「一次沈殿」「生物的処理」「二次沈殿」の4つのプロセスで構成されます。

1. 前処理：スクリーンやグリット除去装置を使用して、大きな固形物や浮遊物を取り除きます。
2. 一次沈殿：有機物を沈殿させ、汚泥を生成します。これにより、後続の生物的処理の負荷を軽減します。 ※汚泥は、処理過程で分離される固形物や微生物の集合体です。
3. 生物的処理：曝気装置で酸素を供給し、好気性微生物が有機物を二酸化炭素と水に分解します。活性汚泥法が一般的です。
4. 二次沈殿：微生物の残留物を沈殿させ、処理水を透明で衛生的な状態にします。沈殿槽を用いて汚泥を分離し、一部は再循環されます。

これらのプロセスにより、好気性処理法は高い処理効率を実現し、比較的短時間で水質を改善できます。

好気性処理法（好気処理法）と
嫌気性処理法の違い

同じく微生物の働きを利用する「嫌気性処理法」との違いを見ていきましょう。

酸素の有無

好気性処理法は、酸素がある環境で生息・活動する微生物の働きを利用します。そのため、微生物に酸素を届けるばっ気装置が必要です。一方、嫌気性処理法は、酸素がない環境で生息・活動する微生物の働きを利用するため、ばっ気装置は要りません。

処理速度

一般的に、好気性処理法の方が処理速度が速いとされています。これは、酸素がある環境で生息・活動する好気性微生物が活発で、増殖するのも速いためです。

嫌気性処理法は微生物の増殖速度が遅く、そのぶん処理速度も遅くなります。

好気性処理法
（好気処理法）のメリット

効率的な分解能力

好気性処理法は、有機物を効率よく分解できるため、処理水の水質が向上します。特に都市部の下水処理場では、高負荷の汚水を迅速に処理する必要があり、この方法が適用されています。

また、好気性処理法は短期間で処理が完了するため、施設の設置面積を抑えることが可能です。

管理が簡単で悪臭発生が少ない

嫌気性処理法ではメタンや硫化水素などの臭気物質が発生しやすいですが、好気性処理法では酸素の供給により分解が進み、悪臭の発生を抑えられます。これにより、都市部や住宅地でも導入しやすいことが特徴です。

また、微生物の管理が比較的簡単で、安定した処理が可能なため、維持管理の手間を軽減できます。

好気性処理法
（好気処理法）のデメリット

エネルギーコストが高い

曝気を行うためにブロワーやエアレーターを稼働させる必要があり、電力消費が大きくなります。そのため、ランニングコストが高くなる傾向があり、省エネ対策が求められます。

特に大規模な処理施設では、電力コストが運用費の大部分を占めることがあり、エネルギー効率の改善が課題となっています。

活性汚泥の管理が必要

処理の過程で発生する活性汚泥を適切に管理しなければ、処理効率が低下したり、処理槽の容量オーバーにつながる可能性があります。そのため、維持管理には専門知識と定期的なメンテナンスが必要です。

さらに、余剰汚泥の発生量が多く、これを適切に処理するための設備や運用コストも考慮する必要があります。

好気性処理法（好気処理法）の
活用事例

排水処理の手間を軽減

製紙工場では、大量の水を使うため、排水の処理を効率的に行うことが求められています。A社では、排水の流れが安定しないと汚泥がうまく沈殿せず、水質が悪化する問題がありました。

また、処理槽内の汚泥濃度の管理が難しく、作業が煩雑でした。そこで、好気処理法を活用した結果、汚泥がしっかり分離され、水質が安定。管理の手間も減り、効率的な排水処理が可能になりました。

※参照元：住友重機械エンバイロメント公式https://www.shiev.shi.co.jp/business/waste_water/example_paper.html

汚れ除去率1.5倍向上

中国の化学工場では、分解しにくい成分を多く含む排水の処理が課題でした。従来の生物膜処理では、膜が厚くなりすぎてしまい、処理の効率が落ちていました。そこで、「源帰」を加え、膜に付着した不要な層を取り除く方法を導入。

その結果、水中の汚れを示す指標（CODcr）の除去効率が1.5倍に向上し、処理後の水を再利用できるようになりました。さらに、設備の維持費を抑えながら、環境への負荷も軽減できました。

※参照元：SUZUKI Lab＆Dev公式（https://www.kireinamizu.net/case/）

処理効率向上でコスト削減

養命酒製造の駒ヶ根工場では、多品目の廃液処理が課題でした。特に、高濃度の排水を中和する作業や、排水処理槽の管理に多くの時間と手間がかかっていました。そこで、新しい水処理システムを導入し、排水の一時保管タンクを増設。

さらに、微生物の力を利用したろ過技術（MBR）を組み合わせたことで、水質が安定し、中和作業の負担が大幅に削減されました。その結果、処理の効率が向上し、年間3,000万円以上のコスト削減につながりました。

※参照元：Daigasエナジー公式（https://ene.osakagas.co.jp/case/case048.html）