複合ビル・空港では、多くの人が利用することで排水量が増加し、上下水道料金の負担にもつながります。水資源の有効活用や災害時の水インフラ確保も課題です。
本記事では、複合ビル・空港における排水の特徴や関係する法規制、排水処理と中水利用の仕組み、設備選定のポイントを解説します。
複合ビル・空港では、飲食店や厨房、トイレ、洗面設備などから性質の異なる排水が発生します。さらに、空港や大規模商業施設では利用者数によって排水量が変動しやすく、処理設備にも対応力が求められます。
ここでは、複合施設で発生する排水の種類と、利用者数に伴う水量変動について解説します。
複合ビル・空港では、飲食店舗の厨房から油脂分を含む厨房排水が発生するほか、トイレからの汚水、洗面所などからの雑排水も生じます。さらに、建物の屋根などに降った雨水も集水されます。
これらは含まれる成分や水質が異なるため、すべてを同じ処理方法で扱うわけではありません。排水の発生源や性状に応じて、除害処理、浄化、再利用などの処理方法を選択することになります。
空港や商業施設では、旅客数・来館者数の増減に伴って給水量や排水量も変動します。特に利用者が集中する施設では、平均的な使用量だけでなく、繁忙時間帯や繁忙期の水量も考慮した設備計画が必要です。
水道使用量が増えれば上水道料金の負担が増えるほか、排水量の増加は下水道料金にも影響します。給水量と排水量を抑えるために、排水処理水の再利用を組み合わせる方法もあります。
複合ビル・空港の排水に関係する規制は、排水先や施設の条件によって異なります。下水道へ排出する場合と公共用水域へ放流する場合では適用される制度が異なるため、施設ごとの排水条件を踏まえた確認が必要です。
下水道へ排水する場合、排水の水質によっては、公共下水道の機能を妨げたり施設を損傷したりすることを防ぐため、下水道法に基づく除害施設や必要な措置が関係します。具体的な排除基準や除害施設の設置条件は、下水道管理者の条例などによって定められます。
一方、公共用水域へ排出する場合には、水質汚濁防止法に基づく排水規制が関係します。ただし、同法の排水規制は特定施設を設置する特定事業場が対象となるため、施設の種類や設備、排出条件を踏まえて適用関係を確認する必要があります。
公共用水域のなかには、水の交換に時間がかかる閉鎖性水域があります。東京湾、伊勢湾、瀬戸内海などでは、通常の排水基準による規制だけでは環境基準の達成が難しい場合があることから、水質汚濁防止法に基づく総量規制が適用されています。
排水処理設備を計画する際は、処理能力だけでなく、最終的な放流先とそこで適用される水質規制も確認する必要があります。たとえば、閉鎖性水域に位置する施設では、放流先の環境条件が水処理設備の設計・運用に関係します。
複合ビル・空港では、排水の種類に応じた前処理を行ったうえで、再利用可能な水を中水として活用する方法があります。排水量の削減や水資源の有効活用を図るには、処理から再利用までを一つの循環として考えることがポイントです。
飲食店舗から発生する厨房排水には、油脂分や残さなどが含まれます。下水道へ排出する場合は、これらが下水道施設の機能を妨げたり損傷させたりしないよう、グリース阻集器や除害施設などによる前処理が必要となる場合があります。
具体的な設置条件や排除基準は、下水道管理者の条例などによって異なります。厨房排水の水質や排出先を確認したうえで、後段の処理設備への負荷も考慮して処理方法を設定します。
洗面所などから発生する雑排水や雨水は、処理・貯留したうえで、トイレ洗浄水や散水などの用途に再利用できます。国の「雨水の利用の推進に関する法律」でも、貯留した雨水を水洗便所や散水などに利用することが「雨水の利用」と定義されています。
また、処理した下水を中水として利用する施設もあります。上水を使っていた用途の一部を再生水で置き換えることで、上水の使用量を抑え、水資源の有効活用につなげられます。
空港や大規模な複合施設では、利用者数の増加や時間帯による水量変動を考慮し、排水処理設備を複数系列に分けて運用する方法があります。複数の処理系列を設けることで、施設の水量変動に対応する構成の一つです。
複合ビル・空港の水処理設備を選定する際は、通常時の水量・水質だけでなく、利用者数の変動や放流先の規制、災害時のインフラ断絶なども考慮します。施設の運用条件に応じて、処理能力や設備構成を検討することが重要です。
空港や商業施設では、繁忙期・閑散期だけでなく、時間帯によっても利用者数が変化します。そのため、設備容量を平均的な排水量だけで決めるのではなく、利用者が集中する時間帯やピーク時の排水量を見込んだ処理能力を検討する必要があります。
処理能力に余裕を持たせるほか、複数系列化などによって水量変動に対応する方法もあります。既存設備を改修する場合は、現在の水量だけでなく、今後の利用者数や施設用途の変化も考慮します。
大規模な複合施設では、災害時に上下水道などの公共インフラが断絶する事態も想定されます。そのため、井戸水などの代替水源や、排水・し尿を施設内で処理する設備を組み合わせ、必要な水環境を維持するBCP対策が考えられます。
災害時の給水確保だけでなく、排水処理やトイレ利用の継続も含めて設備構成を検討することがポイントです。通常時にも活用できる設備を組み合わせることで、平常時と非常時の双方を想定した水インフラの整備につながります。
複合ビルや空港では、高額な上下水道料金の削減や水資源の有効活用、災害時のBCP(事業継続計画)対策、厳しい放流水質規制への対応を目的に水処理・中水再利用設備が導入されています。ここでは導入事例をご紹介します。

羽田空港(第1・第2・第3ターミナルビル)に排水再利用設備を導入した事例です。同空港地区では高額な上下水道料金や、利用客増加に伴う給排水量の膨大化が大きな課題となっていました。
そこで、厨房排水の処理水をトイレ洗浄水として活用する再利用システムを導入。さらに、増大する旅客数に柔軟に対応するため排水処理を複数系列化しました。
その結果、3ビル合計で年間589,604m³におよぶ水道使用量の削減を達成し、給排水コストの低減と空港のサステナビリティ推進に貢献しています。
※参照元:ドリコ公式HPhttps://drico.co.jp/case/184/

ドリコが大手町フィナンシャルシティ・グランキューブに導入した、水インフラ自立化(BCP対策)の事例です。発災時に公共の上下水道が断絶した場合でも、帰宅困難者を安全に受け入れる衛生環境の確保が課題でした。
対策として井戸水の飲適化設備に加え、下水道管破断時でもビル単独でし尿処理を行い、処理水をトイレ洗浄水に再利用できる設備を導入し、通常時も井戸水を冷却塔の補給水として有効活用しています。
平常時には処理水を公共用水域へ放流することで下水道料金の削減にもつなげています。
※参照元:ドリコ公式HPhttps://drico.co.jp/case/188/

住友重機械エンバイロメントグループが関西国際空港の水処理を約30年にわたり支えている事例です。同空港は大阪湾という閉鎖性水域に位置するため、放流する処理水には厳しい水質規制が課されています。
空港内の専用浄化センターで汚水を処理し、その処理水を中水として主に施設内トイレの洗浄水などに再利用する循環型システムを構築。本施設は法的に日本最大の浄化槽として運用されています。
下水処理水の再利用率60〜70%を実現し、24時間365日体制で大規模インフラの環境負荷低減と安定稼働を両立しています。
※参照元:住友重機械エンバイロメント公式HPhttps://www.shiev.shi.co.jp/sustainability/achievement/kansai-airport.html
複合ビル・空港の水処理では、排水の種類や水量の変動、放流先の規制を踏まえた処理に加え、処理水や雨水を中水として活用する仕組みも行われています。災害時の水インフラ確保まで含め、施設の運用条件に応じた設備構成が必要です。
こうした条件を踏まえて水処理設備や排水再利用の仕組みを検討する際は、施設の用途や排水特性に対応できる事業者を選ぶことがポイントになります。本メディアでは、水処理や汚泥処理の実績があるおすすめの水処理企業をご紹介しています。業界特有の水処理設備や排水再利用を検討する際の参考にぜひご活用ください。
業界ごとに異なる排水処理ニーズに対応するには、専門性の高い水処理技術をもつ企業の選定が鍵となります。
それぞれの業界特有の課題を解決した事例を持つパートナーと連携し、法規制の遵守や運用コストの最適化を目指しましょう。
導入実績
など
導入実績
など
導入実績
など