病院の水処理では、使用する水の衛生管理に加え、患者の排せつ物や薬剤などを含む排水の適正な処理が求められます。
本記事では、関係する水質基準や部門ごとの処理プロセス、実際の導入事例を解説します。
病院から排出される水は、一般の生活排水や工場排水と異なる多様な成分を含み、排水の種類や性状に応じた管理が必要です。
ここでは、病院排水全体の概要や、診療・検査などの各部門から生じる排水の特徴を解説します。
病院の排水は、生活排水に近い性質をベースとしながらも、病棟や各部門から特有の成分が排出される点が特徴です。患者の排せつ物や消毒薬、検査薬品などの混入が挙げられます。
なかでも「検査系」「人工透析」「感染系」などの排水では、使用する薬剤や排水の性状によって通常の生活排水とは異なる管理が必要になる場合があります。排水を適正に処理する際は、排水の種類や性状を把握したうえで、浄化、中和、消毒などから必要な処理方法を選定します。
病院の水管理は排水だけでなく、給水・給湯設備や空調設備などの衛生管理も対象となります。循環式の貯湯槽や空気調和設備の冷却塔などは、レジオネラ属菌が増殖しやすい環境となり得ます。
レジオネラ属菌の増殖を防ぐため、設備の種類や管理状況に応じて、清掃や消毒、生物膜の除去などの衛生管理が行われます。病院全体の水管理では、給水・給湯設備から排水設備まで、それぞれの用途やリスクに応じた衛生管理が求められます。
病院の排水に関係する法規制や基準は、排出先や施設の条件によって異なります。公共用水域への排出と下水道への排出では適用される基準が異なるため、自院の排水条件に応じて確認が必要です。
病院の排水に関係する法規制や基準は、排出先や施設の条件によって異なり、公共用水域へ排出する場合には、水質汚濁防止法に基づく排水基準が適用される場合があります。一方、下水道へ排出する場合は、下水道法に基づく排除基準の対象です。医療機関であることだけを理由に水質汚濁防止法が一律に適用されるわけではなく、特定施設の設置状況や施設規模、排出先などによって適用関係が決まります。
また、医療法施行規則では、病院の開設許可申請に関連して、公共用水域へ汚水を排出する場合の排出場所・排出量・水質・処理方法などに関する書類の添付が定められています。病院の新設や改修などで排水設備を計画する場合は、関係する行政機関への確認が必要です。必要な手続きや確認事項についても、計画段階で把握しておくとスムーズです。
※参照元:e-Gov法令検索/医療法施行規則の一部を改正する省令の施行等についてhttps://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6237&dataType=1&pageNo=1
感染症関連の病棟や検査室などでは、排水の性状や取り扱う物質、感染リスクを踏まえた管理が必要になる場合があります。排水の性状や感染リスクに応じて、排水系統を分けたり、不活化・消毒などの処理を組み合わせたりするなど、対象となる排水に合わせた対応が行われます。
ただし、病院から排出されるすべての排水に対して、一律に特別な消毒や不活化処理が必要とされているわけではありません。実際には、排水の性状や感染リスク、使用する薬剤、排出先などによって適した処理方法が異なります。関連する法令や行政機関の指針も踏まえ、個々の排水条件に応じた管理が必要です。
病院排水は部門ごとに成分や性状が異なるため、それぞれの排水条件に応じた処理フローが必要です。ここでは主な処理方法とその役割を解説します。
病院の排水処理では、排水の種類や性状、排出先、求められる処理水質などを踏まえて処理工程を組み立てます。例えば、検査系や透析系の排水では、薬剤や消毒成分などが後段の処理に影響することがあるため、中和などの前処理を組み合わせたうえで、生物処理や膜処理などを行う方法があります。
処理方式はすべての病院で同一ではありません。透析排水の導入事例でも、公共水域へ放流する地域では膜処理方式、下水道が整備された地域では担体流動方式を採用するなど、排出先や処理条件に応じて異なる方式が選択されています。感染リスクへの対応を含め、処理フローは排水の性状や施設条件に応じて異なります。
病院排水の処理では、排水に含まれる有機物などを処理するために、活性汚泥法などの生物処理や膜処理を用いる方法があります。また、排水の性状や感染リスク、使用する薬剤などに応じて、中和や消毒・不活化などの追加処理を組み合わせる場合があります。
ただし、これらの処理工程が病院排水全体に一律で必要となるわけではありません。例えば透析排水では、滅菌成分を中和して後段の生物処理への影響を抑える構成などがあり、処理方式は排水の性状や排出先、必要な処理水質によって異なります。設備の導入や改修では、対象となる排水の水質や処理条件を踏まえて、適した処理工程を検討します。
病院や医療機関において、水処理設備や自動中和装置が導入された事例をご紹介します。

アメシスが手掛けた東京都目黒区の病院厨房排水の処理事例です。調理油分を多く含む厨房排水は薬品の作用を阻害しやすく、通常の浄化槽では対応が困難という課題がありました。そこで油の比重差を利用した加圧浮上分離処理を採用し、専門スタッフによる継続的な維持管理体制を構築しました。これにより油脂分を確実に分離除去し、安定した水処理と適切な設備管理を両立させています。
※参照元:アメシス公式HPhttps://amesys.co.jp/works/224/
クボタが提供する人工透析排水処理パッケージの導入事例です。原水BOD1,500mg/Lという高濃度な透析排水は直接下水道へ流せず、限られた敷地内での個別処理が求められていました。対策として膜処理技術を盛り込んだFRP製パッケージを地下に設置し、駐車場の隙間を有効活用しました。結果、処理水BOD20mg/L以下を維持し、下水道排除基準のクリアと省スペース化を同時に実現しています。
※参照元:クボタ公式HPhttps://www.kubota.co.jp/product/johkasou/uservoice/dialysis.html

セムコーポレーションが大学病院に導入した自動中和装置の事例です。過酢酸を含むpH2.0〜3.0の強酸性排水による配管への負荷が懸念され、30日以内の短納期や2台分の洗浄排水を受け止めるタンクが求められました。そこで新開発のCPH型をベースに200L受水槽や記録機能を備えた特注装置を設計。自動pH調整により設備の損傷を防ぎ、短納期かつ低コストでの導入を叶えています。
※参照元:セムコーポレーション公式HPhttps://www.cemco.jp/media/2025/09/25/66

エイチツーが国立大学付属病院の病理室に導入した自動中和装置の事例です。HE染色装置から出る排水がpH2の強酸性かつ油分を含む点に加え、設置スペースが500×500mm以内という厳しい制約がありました。そこで自社開発のオリジナル小型撹拌機を採用し、超小型ボディ内に全システムを配置しました。狭小スペースの課題を克服し、複雑な性状の酸性排水を静音に自動中和しています。
※参照元:エイチツー公式HPhttps://ph.eichitwo.com/?case=透析排水:国立大学付属病院様
病院の水処理では、部門ごとの排水特性やリスク、排出先などを踏まえた対応と関係法規制の確認が欠かせません。自院の設備環境や排水条件に応じた対策を検討する際は、必要な処理内容や設備仕様を整理したうえで、水処理企業などの専門事業者に相談するとよいでしょう。
本メディアでは、水処理や汚泥処理の実績があるおすすめの水処理企業をご紹介しています。水処理・排水処理に関するパートナー選びの参考にしてください。
業界ごとに異なる排水処理ニーズに対応するには、専門性の高い水処理技術をもつ企業の選定が鍵となります。
それぞれの業界特有の課題を解決した事例を持つパートナーと連携し、法規制の遵守や運用コストの最適化を目指しましょう。
導入実績
など
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