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畜産の水処理とは?

目次
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畜産施設では、家畜ふん尿や畜舎の洗浄などに伴って性状の異なる汚水が発生します。適切に処理を進めるには、汚水の特徴や水質基準を踏まえ、畜種や飼養規模に合わせた処理方式を選定することが重要です。本記事では、畜産汚水の特徴や水質基準、主な処理方法から設備選定のポイント、具体的な導入事例まで解説します。

畜産施設における水処理の特徴

畜産施設の汚水には、家畜ふん尿や洗浄水に由来する有機物や浮遊物質、窒素、リンなどが高濃度に含まれます。水質や発生量は畜種や飼養規模、畜舎の運用方法によって異なるため、汚水の性状に応じた段階的な処理が不可欠です。

家畜ふん尿や洗浄などによって汚水が発生する

畜舎では、床や設備の定期的な洗浄に伴って汚水が発生します。ふん尿が混入した汚水には、高濃度の有機物やSS(浮遊物質量)が含まれます。一方、家畜ふん尿自体は固形分として回収・堆肥化されるケースも多いため、水処理対象となる汚水と固形排せつ物を適切に区別して管理することが重要です。固形物が混入する汚水では、後段の微生物処理槽や配管の目詰まりを防ぎ、処理負荷を抑えるために事前処理として固液分離を行うことが基本となります。

BOD・COD・SSに加えて窒素・リンへの対応が重要になる

畜産汚水では、有機汚濁の指標となるBOD・CODやSSに加え、窒素・リンへの対応が強く求められます。特に窒素成分は水質汚濁防止法に基づく排水基準の対象となっており、畜産農業ではアンモニア性窒素や硝酸性窒素などの硝酸性窒素等に対する基準遵守が重要課題となります。放流先の環境条件に応じて必要な水質項目を正確に把握することが求められます。

畜種や飼養規模などによって水質・水量が異なる

豚、牛、馬などの畜種の違いや飼養頭数、洗浄方法によって、発生する汚水の水量や成分濃度は大きく変動します。また、作業時間帯や畜舎洗浄のタイミングによって一時的に負荷が急増するピーク負荷が発生するため、設備設計にあたっては日平均排水量だけでなく、時間帯ごとの最大変動幅を見越した調整槽容量の設計が欠かせません。

畜産の排水に関わる水質基準・法規制

畜産施設では、水質汚濁防止法に基づく排水規制と、家畜排せつ物法に基づく管理基準の双方が関係します。両者は適用目的や管理対象が異なるため、放流汚水の処理と排せつ物の保管管理を分けて捉える必要があります。

水質汚濁防止法の特定施設・排水基準を確認する

水質汚濁防止法施行令では、畜産農業に関連する特定施設として、総面積50㎡以上の豚房施設、200㎡以上の牛房施設、500㎡以上の馬房施設が定められています。これらの特定施設を設置し、公共用水域へ排水を行う特定事業場には、同法に基づく排水基準の遵守が義務付けられます。

規制対象には、硝酸性窒素等などの有害物質のほか、BOD・COD、SS、窒素、リンなどの生活環境項目が含まれます。なお、生活環境項目は原則として1日あたりの平均的な排出水量が50m³以上の特定事業場に適用されます。施設の設置規模や排水先、自治体が定める上乗せ基準により適用関係が異なるため、事前の精査が欠かせません。

※参照元:e-Gov法令検索/水質汚濁防止法施行令https://laws.e-gov.go.jp/law/346CO0000000188
※参照元:農林水産省/畜産経営に関する排水基準についてhttps://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/t_info/02_haisui/index.html

硝酸性窒素等の暫定排水基準にも注意する

硝酸性窒素等の一般排水基準は100mg/Lに設定されていますが、豚房施設を有する畜産農業に対しては暫定排水基準として400mg/Lが適用されており、適用期限は2028年(令和10年)9月30日までとなっています。なお、牛房・馬房施設についてはすでに一般排水基準(100mg/L)へ移行しており、すべての畜産施設に400mg/Lが適用されるわけではありません。

また、1日あたりの平均的な排出水量が50m³以上で、環境大臣が指定する海域などに関係する特定事業場では、窒素・リンにも排水基準が適用されます。このうち、対象となる豚房施設を有する畜産農業には、窒素130mg/L、リン22mg/Lの暫定基準が2028年(令和10年)9月30日まで設定されています。

※参照元:農林水産省/畜産経営に関する排水基準についてhttps://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/t_info/02_haisui/index.html

家畜排せつ物法による管理基準も確認する

家畜排せつ物法(家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律)は、家畜排せつ物の不適正管理による環境汚染を防止し、適正な処理・利用を促進するための法律です。一定規模以上の畜産業者に対し、管理施設の構造設備や管理方法に関する基準遵守を求めています。

ただし、家畜排せつ物法による構造・管理基準と、水質汚濁防止法に基づく放流規制は別の制度です。家畜排せつ物法に沿って適正管理を行っている場合でも、公共用水域へ排水を放流する際は別途、水質汚濁防止法の排水基準に適合させる必要があります。

※参照元:農林水産省/家畜排せつ物法とはhttps://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/t_mondai/03_about/

畜産施設向けの主な水処理方法・解決策

畜産汚水の処理では、まず固形物の分離や水質調整を行い、その後に生物処理等で有機物を分解・除去します。窒素・リンの高度処理や消毒が必要となるかは、原水の汚水性状や放流先の排水基準に応じて決定します。

固液分離で後段の処理負荷を抑える

汚水にふんなどの固形分が含まれる場合は、事前にスクリーンや振動篩(ふるい)、固液分離機を用いて粗大固形分を取り除きます。前処理段階で固形分の流入を確実に遮断することで、後段の生物処理設備や配管詰まりへの負担を大幅に軽減できます。装置の選定にあたっては、固形物の粒径や含水率、処理水量に合わせた方式を選びます。

生物処理でBOD・CODなどの有機物を処理する

生物処理では、微生物の代謝作用を利用して汚水中の可溶性有機物を分解・除去します。畜産現場では活性汚泥法や各種ばっ気処理が広く用いられますが、有機物濃度やSSが非常に高いため、十分な固液分離と調整槽での流動平均化が前提となります。処理水量や負荷変動に応じて適正なばっ気量を維持する運転管理が重要です。

窒素・リンを除去するための処理を組み合わせる

窒素成分の高度除去には、アンモニア性窒素を好気条件で硝酸性窒素へ変化させる硝化工程と、嫌気条件で硝酸性窒素を窒素ガスへ還元・放散させる脱窒工程を組み合わせた生物学的窒素除去法が効果的です。また、リン成分に対しては、排水基準や放流先の環境条件に応じて凝集剤を添加し、物理化学的に沈殿分離させる処理工程を追加配置します。

必要に応じて高度処理・消毒を行う

生物処理後の放流水質や放流先河川等の環境条件によっては、膜分離装置や砂ろ過、脱色処理、塩素・紫外線による消毒設備を追加します。これらは全施設で必須となるわけではありませんが、厳格な放流基準への適合や処理水の畜舎洗浄水としての再利用を目指す場合に有効な解決策となります。

畜産施設の水処理設備を選定する際のポイント

水処理設備を選定する際は、原水の水質・水量だけでなく、日常の運転管理性や発生する汚泥の処理計画まで含めて総合的に検討することが重要です。

畜種・飼養規模・汚水負荷を把握する

豚や牛などの畜種、飼養頭数、畜舎の洗浄方法によって排出される汚水量や有機物負荷は大きく異なります。事前の水質分析と排水量測定を実施し、BOD・COD、SS、窒素成分などの平均濃度および最大負荷を正確に把握したうえで、適切な処理能力(キャパシティ)を設定することが不可欠です。

水量・水質の変動に対応できるか確認する

畜舎の一斉洗浄や飼養状況の変化により、時間帯や曜日によって汚水量・有機物負荷が急増するピーク負荷が発生します。日平均値のみで設備容量を決定すると処理能力オーバーを起こすおそれがあるため、十分な容量をもった調整槽の設置や、ばっ気制御などの柔軟な運転管理手法を確認しておくことが大切です。

汚泥処理や維持管理まで含めて設備を考える

固液分離や生物処理の過程では、集積された固形分や余剰汚泥(畜産スラッジ)が日常的に発生します。汚泥脱水機の導入による減容化や搬出・堆肥化ルートの確保、処分費用の試算まで含めた計画設定が求められます。さらに、定期的な清掃や機器点検、薬品補充などを安定して継続できるよう、現場での維持管理の手間や要員計画も考慮しておくことがポイントです。

畜産施設における水処理・排水処理の事例

MBR膜処理で高濃度汚濁を基準値以下にした事例

養豚排水は高濃度の有機物(BOD・SS)や窒素を含み、厳しい放流基準のクリアが課題となります。

戸上電機製作所の実例では、膜分離活性汚泥法(MBR)と間欠曝気による脱窒技術を導入。原水BOD 20,000mg/Lを6mg/L、全窒素を50mg/Lまで軽減し、基準値を下回る高い清澄度での河川放流を実現しています。

※参照元:戸上電機製作所/養豚排水処理システムの設置実例https://www.togami-elec.co.jp/product/kankyou4_1.html

豚の肥育施設に排水処理設備を導入した事例

畜産施設の水処理事例2
引用元:鶴見製作所公式HP
https://www.tsurumipump.co.jp/projects/case/197.php

鹿児島県内の豚肥育農場では、排水処理における汚泥脱水の手間や、曝気・撹拌にかかる電力コスト・騒音が課題となっていました。

そこで汚泥脱水用に「多重板型スクリュープレス脱水機(MDC型)」2台、曝気・撹拌用に「水中エアミキサー(TAR型)」6台を導入することで、目詰まりを防ぐ自動運転で脱水作業の手間を削減したほか、高い酸素移動効率で省エネと低騒音・低臭気な環境を実現しました。特定工程の機器更新により、プラントを全面刷新せず現場の課題解決した事例です。

※参照元:鶴見製作所https://www.tsurumipump.co.jp/projects/case/197.php

まとめ

畜産施設の汚水処理では、高濃度の有機物やSS、窒素・リンに対し、固液分離や生物処理(活性汚泥法・MBR等)、硝化・脱窒を段階的に組み合わせることが基本となります。水質汚濁防止法に基づく排水基準と、家畜排せつ物法の管理基準の違いを正しく理解し、法令遵守と環境負荷低減を図ることが求められます。

設備選定の際は、日々の処理性能のみならず、ピーク負荷対策や汚泥脱水・減容化、日常の維持管理負担まで見据えてシステムを比較検討することが成功のポイントです。

本メディアでは、業界特有の課題別におすすめの水処理企業を紹介しています。ぜひパートナー選びの参考にしてください。

用途別
おすすめの水処理企業3選

業界ごとに異なる排水処理ニーズに対応するには、専門性の高い水処理技術をもつ企業の選定が鍵となります。
それぞれの業界特有の課題を解決した事例を持つパートナーと連携し、法規制の遵守や運用コストの最適化を目指しましょう。

人体に有害な物質を含む
工場や製造業
などの排水処理の事例を持つ
ドリコ
ドリコHP
引用元:ドリコHP
(https://www.drico.co.jp/)
おすすめな理由

水処理診断で必要な処理能力を調査。地質調査や薬剤処理を含め大量の高負荷排水でも要件を満たす設計を提案します。

導入実績

  • 食品製造工場
  • 電子部品工場
  • 化学工場

など

日常生活に不可欠な
公共上下水道
などの排水処理の事例を持つ
水ingエンジニアリング
水ingエンジニアリングHP
引用元:水ingエンジニアリングHP
(https://www.sec.swing-w.com/)
おすすめな理由

画像認識AIを用いて24時間365日現場設備の状態を監視し、異常をすぐに察知。年中安定した水処理をサポートします。

導入実績

  • 黒部市 下水道バイオマスエネルギー利活用施設
  • 神戸市東灘処理場

など

水の再利用も重視する
ホテルやモール
などの排水処理の事例を持つ
第一環境アクア
第一環境アクアHP
引用元:第一環境アクアHP
(http://www.daiichikankyo-aqua.com/)
おすすめな理由

建設や維持管理のコストを抑え、水槽容量サイズの小さいバイオ接触酸化法による排水・中水利用を提供します。

導入実績

  • ホテル
  • 百貨店
  • アウトレットモール

など